交流館を守るためには、いつまでも宮園泰造に頼ってばかりではいられない。

そう思い、立て直し案を考えていた恵巳。まともに企画などしたことが無く、企画展示を考えてみても、実施できるのかどうかという肝心なところがよくわからずにいた。

誰かアドバイスをくれる人はいないだろうか。

そう考えたときに真っ先に浮かんだ人物は拡樹だった。だが、いくら婚約者とはいえ、別の博物館の館長をしている男。
ライバルというにはおこがましいが、敵に塩を送るようなことはしないのではないか。それに、簡単に頼ってしまうのも何か違う気がしていた。

「一人で考え込むのは悪い癖ですよ」

受付でパソコンに向かって企画案を練っていると、天から声が降ってきた。

「お父さんから聞きました。交流館の入館者数を増やすために企画を考えていると。

どうして相談してくれないんですか?」

どこから現れたのか、受付に入ってきている拡樹は、パソコンの画面を覗いていた。その目が、画面から恵巳に移る。

「だって、拡樹さんは…」

「別の博物館の人間だから相談しても意味がない、ですか?

職業人である前に、あなたの婚約者なんですけどね。
僕の婚約者はそのことがよくわかっていないようで困る。

なんなら、今ここでわからせてあげましょうか?」

すっと滑らかな手つきが首筋を這う。くすぐったくて身をよじる恵巳だが、拡樹はその状況すらも楽しんでいるようである。