波の音と、潮の匂い。ヨースケくんは、この匂いと音が大好きだった。だからきっと、ここにいるはず。

ヨースケくんと泳いだ海、歩いた砂浜、探検した近くの山、思い出の場所を全部探した。

でも、ヨースケくんは見つからない。ヨースケくんの匂いすらしない。ヨースケくんはここにはいないんだ……。

僕が尻尾を落としながら戻ると、お父さんとお母さんが必死で僕を探しているところだった。

「アポロ!!」

お父さんとお母さんは僕に駆け寄り、僕を抱きしめる。お母さんは、また泣いていた。

「あなたまで、私たちのそばからいなくならないで……!」

その言葉の意味はわからなかったけど、僕がお母さんを泣かせてしまったというのはわかった。

僕は、お母さんの頰を伝う涙をペロリと舌で舐める。しょっぱい。海と同じ味がする。

お父さん、お母さん、心配かけてごめんね。ずっとヨースケくんを探してたんだ。

……でも、見つからなかったよ。