僕は、ずっと待っていることにしたんだ。ヨースケくんはきっと帰って来る。お母さんたちが笑ってくれるように、僕はヨースケくんを待つことにした。

自転車が道を走る音がすれば、僕は窓のそばに移動してヨースケくんじゃないかと目を向ける。また違う人だった……。

散歩中だって、ヨースケくんがいないかどうか探しているんだ。鼻にも意識を集中する。風に乗って、ヨースケくんの匂いが運ばれて来るかもしれない。でも、いつだって風は季節を教えてくれるだけだった。

春になっても、夏になっても、秋が来て、冬になっても、ヨースケくんは帰ってこない。ヨースケくんはどこに行っちゃったの?

その頃、お父さんとお母さんが僕を海に連れて行ってくれた。ヨースケくんと何度も行ったことのある海。ヨースケくんと、僕が大好きな海。

車が止まり、お父さんが扉を開けた刹那、僕は海に飛び出した。お父さんの呼ぶ声が聞こえたけど、振り返らない。

ヨースケくん、ヨースケくん、どこにいるの?迎えに来たよ!一緒に帰ろう!