私が樹を意識するようになったきっかけは、
小学校の卒業式を直前に控えたある日のことだった。
階段を友達とおしゃべりしながら降りていた私。
後ろからすごい勢いで降りてくる男子に気が付かなかった。
その事に気づいた樹が、
私の腕をグイッと引き寄せてくれたのだ。
あの時。
あの瞬間。
樹を初めて"男の子"だと思った。
樹は、女の子の気持ちに良く気が付く方じゃないから、
私の変化には気づかなかった。
それが嬉しくも、悲しくもあった。
その後も、私は樹の"お母さん"であり続けた。
今も。多分、これからも。