静まり返る会場。
ただそれは一瞬のことで。
「わああぁぁぁぁ!!」
割れんばかりの歓声が響き渡った。
「あれは……オーバーヘッドキック」
私はぽつりと呟く。
オーバーヘッドキックは、サッカー選手なら試合中に一度はキメてみたいと憧れるもの。
高難易度なものなのに……悠真はそれをキメてしまった。
悠真のサッカーの腕まえは、全然鈍っていなかったみたい。
本当に、悠真はすごい!
「悠真あぁぁぁ!!」
ゴールをキメた悠真のもとへ、白川くんが走ってくる。
それにつられるように、他のチームメイトも悠真のもとへ。
みんなに囲まれている悠真の姿は、中学時代の彼を思い出させる。
悠真もそれを感じたようで、かつての活き活きとした表情を浮かべていた。
「向葵ちゃん!すごいよ、瀬名くん!」
優月が興奮したように話している。
私もそれにうんうんと頷くけど、心は別のことを考えていた。
……きっと、悠真はまだサッカーがしたかったはず。
でも私はそれを奪ってしまったから。
いつもどこかで罪悪感を感じていた。
そんなふうにさせた張本人が何言ってんだって感じだし、そんな資格がないのもわかってる。
だけど……。
少しでも悠真がサッカーを続けたいと思っているなら、私が背中を押してあげなきゃいけない。
もういいんだよ、付き合わせちゃってごめんねって。
悠真がこんな生活する必要なんて、ないんだから。
……──過去に縛られるのは私だけでいい。
