答えられないでいると、鏑木くんは私の耳に顔を近づけて、




「永野さんたちにまた何かされたら、いつでも俺に言ってね」



耳打ちをしてから、にこっと笑った。




「は、はい……ありがとう、ございます…」



慌てて頭を下げると、鏑木くんはチャイムが鳴る前に席に戻っていった。



今回は、鏑木くんが助けてくれたからよかったけど……。



もし、また今のような状況になったらどうしようもできない。



永野さんたちの態度はひどくなっていく一方だし。



このままエスカレートしていったら、中学のときと同じことを繰り返すことになる。



それだけは絶対に避けなきゃいけない。



何か対策を考えないと。



思わずため息をついてしまう。



そのとき、先生が教室に入ってきて授業が始まった。



でも、今授業に集中するなんてできるわけない。



だから、私は窓の外をぼーっと眺めていた。



被害妄想みたいになっちゃうから、あんまり思いたくはないんだけど……。



なんで私がいじめられなきゃいけないんだろう。



私が永野さんたちに何をしたって言うの?



ただ地味なだけでいじめられるって……。



目立たないようにするには、これしかなかったのに。



自分から始めといて勝手なのはわかってるけど。





──こんな生活、早く終わりにしたい。