鏑木くんは私たちの雰囲気が変なのを察したのか、少しだけ眉をしかめたあと、




「みんな、そろそろ授業始まるよ?次の日本史の先生、時間に厳しいから座っておかないと怒られちゃうかも」



にこっと愛嬌のある笑顔を浮かべて、冗談っぽく言った。




「え…あ、本当だ!教えてくれてありがとう、爽くん」



鏑木くんの笑顔で気を取り直した永野さんたちは、そそくさと自分たちの席に戻っていった。



さすが鏑木くん、恐るべし人気者パワー。



ていうか、今のは私を助けてくれたってことだよね……?



だったらお礼言わないと!



そう思って立ち上がろうとしたら、




「大丈夫だった?新橋さん」



いつの間にか私の前にいた彼に声をかけられた。




「か、鏑木…くん」



「もしかして、いつもあんなふうに言われてるの?」



「えと……」



心配そうな目を向けてくる鏑木くんに、何も返せない。



永野さんたちが私を睨みつけてて、言えるような状況じゃないし……。



もし言ったらボコボコにされそう。