悟史と亜依から毎月、少しばかりの仕送りがある

せめてもの罪滅ぼしかよ?って最初は想った

だが‥‥父さんの想いであり


父さんの想いを支えているのだと想うと‥‥

撥ね付ける事は出来なかった

亜沙美は「お前にだから、お前が貰っておくか決めなさい!」と言った

だから父さんに逢いに行った

連絡すると父さんは驚いて‥‥それでいて嬉しそうに『必ず逝くよ』と約束してくれた

本当に来るか?

半信半疑だった

子供の頃‥待ってても来なかった父を待つのは諦めたあの日から‥‥

何も信じる事を辞めたのだ

約束の場所に父は‥時間の一時間前から待っていた

早めに着いた俺は‥‥信じられない想いで父さんを見た

「玲音か?」

大人になった我が子を確認する

一緒に過ごしていない時間は確実に息子を大人にし‥‥

もう記憶の中の息子の姿ではないからだ‥‥

「そうだよ父さん」

「今日は‥‥本当にありがとう」

悟史は玲音の手を取って礼を述べた

年を取ったなこの人も‥

玲音はそう想った

別れてからの時間が‥‥記憶を止めていたのだと‥‥

初めて気が付いた

玲音はそんな想いを断ち切る様に口を開いた

「仕送り、もう良いです」

「玲音‥」

「俺、奨学金で授業料は免除だし、ばあちゃんとじいちゃんが小遣いをくれるから、バイトもしてない
俺は大丈夫だから‥‥父さんは父さんの家庭を大切にしてよ」

「玲音、せめてお前が二十歳になるまでは‥‥仕送りをさせて貰えないか?
本当に申し訳ない程に少しだけど‥‥お前の為に使いたいんだ」

「父さん、無理してない?
俺があの日‥‥父さんを切り捨てたから‥」

「違う!違うんだ玲音
俺はお前にとって善き父ではなかったな
かといって真依の善き父でもなかった
俺は‥‥彼女たちに甘えて‥‥逃げていただけだったんだ
ズルい男だったんだ
だけど亜沙美はそんな俺を責める事なく‥‥
お前も俺を責めなかった
いっそ‥‥罵られた方が楽だったよ
そんな俺が‥‥烏滸がましいのは解っているが‥‥少しでも我が子の為にしてやりたいんだ
身勝手な父親の勝手な贖罪だと想ってくれ‥」