悟史は離婚届にサインした
息子からたった一度‥‥我が儘を謂われたからだ
一度も我が儘を言わなかった
一度も我が儘を言わせなかった
何時も何時も‥‥距離を取らせてしまった
悟史はサインした離婚届を玲音に渡した
玲音はその離婚届を亜沙美に渡した
玲音は「俺に父は要りません、親子だと今後は一切名乗るつもりはありません!
あなたもそのつもりでお願いします!」と突き放す様に言った
そう言わせたのは‥‥悟史だ
悟史が壊した家庭だった
悟史が壊した家族だった
『お父さん!』
輝いた瞳で見上げてくる息子を手放したのは‥‥自分だ
亜沙美は「近いうちにこの家を出ます。今までありがとうございました」と礼を言った
太陽の様に明るい女性だった
その明るさに癒され
その明るさに甘えていたのだ
「この家を出るのか?」
「はい。0からの出発したいので、何も要りません!
何一つ要らないので、あなたも要りません!」
何もかも捨てて再出発する
亜沙美の強い意志が垣間見えた
入院した時、見舞いにも逝かなかった
亜沙美が大丈夫ですからと言ったから‥‥後回しにした
妻が入院したのに見舞わない夫など切り捨てられて当たり前なのだ
何もかもが今更だった
