17歳の香椎穂積として
一年間の時間をもらえたこと。

高校生の景都に出会えたことはとても幸せだった。

出会って本当はすぐにでも、自分を好きになってもらいたかった。

景都にうまく気持ちを伝えられなくて、
でも、自分につなぎとめたくて
それで、俺を身代わりにしたらいいって言ってしまった。

触れたくて
側にいたくて
とても愛おしいのに
自分のものにならないことがもどかしくて

口にしていた。

景都のことは、嫌いだ

と。

一年というリミットの焦りと
景都が好きすぎてどうしようもない
気持ちが溢れて仕方なかった。

でも、
他の男に気持ちがあるのが許せなくて。
どうしてじぶんにふりむいてくれないのかと悔しくて。
そして、一年後には気持ちが通じたとしても忘れられてしまう。

好きにならないようにしないといけない。
そう思うたびに、気持ちはとまらなかった。


好きすぎて嫌いだった。

嫌いだと口にすることで、
気持ちを抑えようとしていたんだ。


だけど
やっぱり
おれは、景都が好きでたまらなかった。




穂積の話にただわたしは泣くことしかできなかった。









「俺はいま、17歳の香椎穂積だけど、中身は27歳。」
「、、、、」


「桜の木の前で会った
景都と、
10年前の今会っている景都はやっぱり変わらなくて、とても可愛くて、脆くて傷つきやすい女の子だった。」

穂積がどことなく大人びた、雰囲気だった理由がわかったような気がした。



「景都が義兄さんとのこと、それがずっと景都の笑顔を奪っているとしたら、俺は自分の残りの時間を使って取り戻したいとおもった。」
「.....」
「でも、やっぱり、なかなか景都を笑顔にできなくて、でも、好きな気持ちは抑えられなくて。ごめんね、、たくさん、傷つけた。」
「そんな、ことない。穂積がいてくれたから、そばにいてくれたから私前に進めた。」

「あの日、景都に気持ちを伝えることはやめようと思った。景都には、最低な奴だと思われたままで消えようと思った。気持ちを伝えたところで、いなくなるのはわかっていたから、中途半端に困らせてもと思っていたんだけど。」

でも、、、と私の髪の毛をさわりながら、
気持ちは抑えられなかった。と呟いた。


「穂積はどうなるの?これから。」
このまま、、また、17歳からやり直す?これからもいっしょだよね?」

「来年の、桜祭りには何も知らない香椎穂積に戻ると思う。」

「えっ?」
「あのとき、意識が消える中、聞こえたんだ。
全ての記憶は消えるって。多分、こうして景都と過ごした時間はなかったことになる。」


全て消える??

「やだ、やだよ!そんなの嫌だ!」
「また10年後に会えるよ。」
「そんなの嫌だ。だってその時には、、」

もう、残された時間は少ない。
ずっとこのままいたい。

「このまま、ずっといたい。穂積を好きな気持ち消したくない。」
「また、会えるよ。」
「やだ!」
まるで子供のように駄々をこねて、穂積を困らせる。

「10年後なんて待てない」
ぎゅっと穂積がわたしを抱きしめた。

強く強く、、。

「ごめん。もう決まっていることなんだ。

「....」
涙が止まらない。

「景都、ごめんね。悲しい思いさせて。」

「、、、


「景都、あと、四ヶ月後にはおれは記憶もなくなり、きっと、おれに関わる人たちすべてから17歳のおれと過ごした時間は消えると思う。
おれも、たぶん、いまのことも忘れて元の生活を過ごすんだと思う。


「......」

「景都、選んでいいよ。景都が一緒にいることがしんどいなら、おれはこのまま離れる。桜祭りまで景都には会わない。」
「えっ?」

「もし、のこされた時間、景都の時間を俺にくれるなら、このまま側にいてほしい。」

穂積はずるい。
わたしに選ばせるなんて。