彼と帰る方向は同じだと初めて知った。

そして
実は私の家にも近いということも。
「同じ中学だった?」
「いや・・俺は中学までは違うところに住んでいたから」

すこし言いにくそうだった。
何かあるのかなと思ったけど、聞かないほうがいいような気がしたからそのまま
黙っていた。



いつも、、
図書室で別れているから、こうして帰り道一緒にいるのが
すこし、くすぐったい。

今日は作業がすこし長引いてしまい、いつもより
帰りが遅いからと今日は家の近くまで送ってくれるつもりだったみたい。

彼が遅くなってごめんねと謝っていた。





「はじめのころは、佐々木さん、すごく怒っているのかなって思うくらい、オレのことにらんでいたから、こうして普通にしてくれてうれしいよ」

「えっ、そんな私怒っていたつもりないけど。」

毎日つまらないっていうのが顔に出ていたのかな・・。

「・・俺のこと警戒していたでしょ?」

「そんなこと、ないよ。いろいろ・・いろいろあって・・自分にゆとりがなくて。あまりまわりとかかわろうと思わなかった。」

正直、今もゆとりないし。
感情も和樹くんにいまだに振り回されている。

いろんなことが和樹君のことに結びついて
時々、感情の波に押しつぶされそうになる。

何をしてもつまらないし
表面上だけお取り繕っている毎日。

自分には何もなくて・・
だからどうでもよかった、何もかも。



一瞬、沈黙のあと、彼が

「・・佐々木さん、俺」
彼の手が私の顔に伸びてきて
何か言いかけたとき

「景都!」
「和樹くん」



和樹くんが
通りの向こうから歩いてくるのが見えた。
思わず私は後ずさった。
その時後ろのほうにいた彼にドンとぶつかった・
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫?」

体制が崩れて
肩を掴まれてバランスを崩しそうになった私を彼が支えてくれた。

「あの人。。知り合い?」
「、、お姉ちゃんと今度結婚する人」

和樹くんは、仕事の帰りなのか、スーツ姿だった。

「今、帰りなの?」
「うん」
和樹くんは私の背後を一瞥して怪訝そうに聞いてきた。
「彼は?」
「‥同じクラスの香椎くん。」
目をあまり、和樹くんと合わせたくなくて、横を向く。

「そうなんだ。・・・景都、いまから紗希と約束していて家に行くつもりだったから一緒に帰ろう」

手首を掴まれて思わずぎゅっと体を硬くする。

「それじゃ。ここまでありがとう。」

和樹くんは彼の顔を見て建前のお礼を伝え歩き出した。

「あっ、また明日。」

和樹くんに引きづられるようにその場を離れた。

本当はもう少し一緒に痛かった・・・。
すこし胸がちくっと痛んだ。