「色も知らなかった私に
色を教えてくれた君へ

私は色を知らずに生まれた
何も色がないキャンパスを手に

そのキャンパスに少しずつ色を染めながら、人は成長する
私のキャンパスには色がない

そんな私を笑う人の色は汚い
そんな私に優しくしてくれた君の色は鮮やかで綺麗だ

君が教えてくれた。色んな色を。君のおかげで私のキャンパスはこんなに綺麗なんだよ?ねぇ

君は、夢にも色があるんだと言った
私の夢は何色なのだろう」

アイリスは歌う。ビオラのことを思って。

「消えた君に贈る私の絵」

歌い終わったと同時にアイリスは命を落とした。ビオラを追いかけるように。ビオラの作った髪飾りには、自分の命を引き換えに自然を元に戻す力があった。

倒れたアイリスの周りには、草が生え、何輪かの花が咲いている。何百年に出てきた太陽がアイリスを照らしていた。

しかし、二度と生物が姿を見せることは無いだろう。大気は薄く、紫外線も強い。これまでアイリスが生きてこられたのが不思議なくらいだ。

アイリスの周りに咲く草花が枯れ、消えていくのも時間の問題だろう。

静寂に包まれた世界に、アイリスが故障する音だけが響いた。