あれから何百年の月日が流れたのだろう。荒れた大地を無言でアイリスは歩く。1人寂しく。

この世界は、異常な科学の進歩によって滅んでしまった。科学を進歩させるだけで環境には無関心。そのせいで人間は絶滅。それどころか生物の1匹すら居ない。

そんな世界にアイリスは居た。空は分厚く黒い雲で覆われ、空気は汚く濁っていた。外も灼熱のように暑い。

今日もアイリスは研究所へ戻る。研究所の中は何百年も前から変わらない。彼の発明品が埃被った状態で置かれていた。

アイリスはふと研究所の隅へ目を移す。アイリスの目に映ったのは、何百年も前にビオラが育てていた花が入っていた植木鉢。

アイリスはそれを見つめ、ビオラのことを思い出す。連鎖反応のように髪飾りのこととビオラが「この髪飾りだけは、本当に癒したいものがある時だけしか使ったらダメだよ?だって――」と言ったことを思い出し、アイリスは迷うことなく髪飾りを取り出して髪に付けた。急いで研究所を出る。

当初、アイリスはこの髪飾りをもらった意 味とビオラが花を見ながら悲しそうに笑う意味がが分からなかった。しかし、今なら理解出来る。

ビオラは自然が好きだ。科学が進歩し続ければ、いつかは自然が無くなってしまうだろうと想定してビオラはこの髪飾りを作ったのだ。

アイリスは深呼吸をし、息を吸った。そして、口を開く。