「丈の方が黒いでしょうが!!」






そう言いながら、私もまたグラウンドまで走る。
いったい、何回このやり取りを続ければいいんだろうか。ほんとに、飽きない奴だ。






私、藤谷みう。高校1年生。小さい頃からずっと憧れていた野球部のマネージャーをしている。憧れてえがいていたマネージャー像とはずっと掛け離れた現実だけど、それはそれで楽しいし凄くやりがいがある。






3年生の夏が終わり、もうすぐ秋大会がやってくる。3年生のマネージャー2人が引退し、今は私1人なんだ。
2年生のマネージャーはいないし、マネ先輩がいないのってほんと寂しい...。引退した3年生に戻ってきて欲しいくらいだ。






カキーン






カキーン






グランドの方からはバッティング練習をしている音が聞こえてきた。すると、






「マネージャー!来てー!」






グランドから呼ぶ声が聞こえてきた。
誰か怪我した?!そう思って慌てていくと






「遥輝かえってきたか?!抽選の結果が知りたくてよぉ!」






怪我じゃなかったのか。安心した、と同時にそんな事かなんて思っちゃったり。






「遥輝さんならまだですよ。でも、もうすぐ学校着く頃だと思います!試合、どことでしょうね?」






「そうだなぁ。まっ、どこと当たったとしても全力で勝ちにいくだけだよ。」







「てかホント、試合楽しみすぎるわ!もう、抽選会の事で頭いっぱいで授業に集中出来んかったし!!」






「いや、俊介さん?授業に集中できないのはいつもの事ですよね???」







「そうそう!いつもの事!ってマネージャー!よくゆうよなぁ」






そう。今日は秋大会の抽選会の日。






キャプテンの遥輝さんが監督さんと一緒に抽選会に参加している。それで今日は、対戦相手がとこかとみんなソワソワしているのだ。






これから始まる秋大会の事について2人で話していると、皆集まってきた。秋大会前だっていうのに、練習しないで話して...もう!






でも、こうやって野球部で集まってワイワイ話してる時間が何気に好きだったりする。






そうしてるうちに監督さんと遥輝さんが帰ってきた。






「監督さん、こんちゃ!抽選会どうでしたか?!対戦相手はどこですか?!」






抽選の結果を1番に聞いてくる俊介さんに監督さんも苦笑い。






「前田、一旦落ち着け。宮園、対戦相手を発表してくれ。」






「分かりました。皆集合出来てるな。1回戦は高川高校だ。」






高川高校かぁ。高川高校には、苦い思い出がある。練習試合をした時に、10対3でコールド負けしたのだ。






みんなの顔が少し曇ったように思えた。







「1度練習試合をしてコールド負けしている相手だ。だけど、それは夏頃の話だから今は分からない。俺達も、相手も成長してるはずだからな。前の結果なんて気にするな。勝つために気合を入れて練習するぞ!」