「うーん、なんかああやってはしゃぐのは柄じゃないと思って」

「ふうん、珍しくイズミが露出高い恰好してるのに勿体ない」

「ホントやめてよね、キモイ」

「キモイはひでえなあ?」

「どーせ今回のキャンプに来たのもこれが狙いでしょ」

「せーかい、女の子の水着姿って興奮するよねー」


新条は隣に並んで同じように川に足だけ突っ込んだ。海パンの上に汚れた白いTシャツを着ている。アイロンがかけられているわけもなく、しわがよったそれは新条らしい。

こんなやつだけれど、なぜか女の子にはすごくモテる。まあ、私みたいなのにもこうやってフレンドリーに絡んでくるようなところが好感度が高いんだろうけど。


「ほんっと相変わらずだらしない奴」

「いーのいーの、おれはこーいうスタンスで生きてるんだから」


後輩の誰がかわいーだとか、あの子のスタイルはサイコー、だとか。ほんとうに考えてることも発言もゴミみたいな奴。でも何故だか憎めない。

だって新条は、彫刻を掘っている時だけはすごく真剣な顔をする。

自分のアトリエにこもって、頭に白いタオルを巻いて、作品に取り掛かっているときは1週間部屋から出てこないこともある。完全に本能型、作りたいときに作りたいものを短期間で生み出してしまう。こいつのそういうところはちょっと尊敬していたりするんだけどね。


「それにしてもイズミ、最近かわいーのに懐かれてるみたいじゃん」

「かわいーのって?」

「とぼけんなよー、年下の天才クン、わかってんだろ?」