「ちょっとちょっと、サイコーじゃないっスかーミナミさん!」

「ネ、ここヤバイっしょー?」


きらきらと目を光らせる先には、緑が生い茂る中に流れる岩場に挟まれた川と、そこに流れる低い滝。どうやらここの施設は、この川が有名らしい。滝の高さが低いから、あそこから飛び込んでスリルを味わうのが鉄板なんだとか。

ツカちゃんとミナミをはじめとする、うちの寮でもかなりアクティブな人たちがはしゃぎながら次々に川に飛び込んでいく。

今更ながらミナミの人脈にはびっくりさせられる。『キャンプやろう!』というたった一言でこんなにも人が集まるものだろうか。


私も一応泳げるように水着を持ってきたけれど、なんだか気恥ずかしいしはしゃぐ気分でもないから、上にTシャツと短パンをはいてきた。ミナミなんて浮き輪にビーチボールまで用意しちゃってるのにね。

みんな川へ入ってはしゃいでいるので、仕方なく木陰になった岩場を見つけて座り込む。そっとビーチサンダルのまま川に足をつけると、ひんやりして気持ちいい。

こんな時、群れるのがキライなハヅキが大抵何も言わずに横にいてくれたりするんだけど、どうやらあいつは宣言通りコテージで寝ているらしい。ほんとマイペースな奴。

太陽光に照らされた水の色はなんだか不思議なほどきれいに見えるな。これを絵に描くとしたらどうやって表現するんだろう。


「あれ、イズミ泳がないの?」


急に声をかけられたので驚いて顔を上げると、見慣れたオトコがそこに立っている。


「シンジョウ、どうしたの」

「いやどーしたのはこっちのセリフでしょ。みんなあんなにはしゃいでんのにこんなとこに一人でいるなんてさ」


よっこらせ、と新条が躊躇いもなく私の横に腰を下ろした。

――新条 修光(シンジョウ ノブアキ)。

彫刻科専攻2年で私と学年は同じだけれど、浪人しているから年齢はひとつ年上。キンパツの派手なロン毛を後ろで縛って、前髪はヘアピンでとめている。ひとことで言うと〝だらしないオトコ〟だ。