「そんで、ハヅキは今どこに?」
「落ち込んでずっとアトリエに籠もってるって」
「イズミ行かなくていいのかよ」
「んー、でも今日はミナミとシンジョウと約束してたし……」
美大祭は案外おもしろい。作品展はイベントのほんの一部にすぎない。いろんな出店やイベントをやっているので、今日は朝からミナミとシンジョウと構内を回ると約束していたのだ。
「そんなこと言ってねえで行ってやれよ」
「うーわ、シンジョウ本当は嬉しいくせにー」
「ミナミはウルセエんだよ!」
クスクスと笑っていると、夕方17時を知らせるチャイムが鳴り始めた。もうこんな時間か、ビックリした。
17:30に一度本祭が終わって、18:30から後夜祭だ。
「もうこんな時間かー」
「結構楽しんだね」
「……ごめん、やっぱりハヅキのところ行ってみようかな」
「はは、謝ることないでしょイズミ! 行ってやんなー、あいつ絶対すねてるよ」
「心底うぜえけどしょうがねえな」
二人の優しさにいつもこうやって助けられてる。
「ありがとう」と笑って、ハヅキのアトリエへと足を向けた。