「うん?」

「……シンジョウ先輩とは、手繋いでただけですか」

「ああ、その話、もう終わったと思ってた」

「まだ、です」

「シンジョウとは何もないよ。ちゃんと話して、告白も断った。今でもいい友達だよ」

「そ、っか」



どこかホッとしたように胸をなで下ろすと、ハヅキがそっと私の手を取った。



「……イズミせんぱいが誰かと付き合っても、せんぱいが幸せならそれでいいって、自分に言い聞かせてたんですけど……やっぱり、誰かの物になるのは嫌だな」



いつも、言うことがストレートだ。



「ねえじゃあ、美大際、ハヅキの作品楽しみにしてていい?」

「じゃあって、話の流れおかしいです」

「この話の続きは、その後にしよう」

「え、なんでですか、」

「その方が面白みがあるでしょ?」

「せんぱいって結構意地悪ですね」

「ハヅキのやる気が上がるかなって思って」

「……もちろんです、」




───浅井葉月のこと。

手を伸ばして、捕まえられないと思った。何を抱えていて、どうしてあんなに心揺さぶる絵を描いているのかわからなかった。

だけど、近づいた。



少しだけ、触れた。



天才だっていいんだって、きっときみが教えてくれた。