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寮付近になって、シンジョウは私の手を離した。もちろん電車の中まで繋いでいたわけではないけれど、噴水広場から駅までと、寮の最寄り駅からここまで。繋いだ手は所々かたくて皮がむけていた。彫刻科の手だった。
薄暗い中、私の方に向き直ったシンジョウは、最後に『ありがとう、明日からも、またよろしく』と笑った。
私はどうしても、ハヅキに会いに行きたかった。
たぶん、多分だけれど、でも、きっとそうだ。
シンジョウが自分の気持ちを私にさらけ出したこと。今日、デートに誘ってくれたこと。私がハヅキに対して持っている感情と、シンジョウが私に対して持っている感情はよく似ていると言ってくれたこと。
全部、私にハヅキが必要だとわかっていて、自分が傷つくこともわかっていて、それでもこの選択をしてくれた。
シンジョウ、きみはきっと、誰よりも優しい。いつかシンジョウの手をとならなかったこと、後悔する日がくるかもしれない。
だけどね、わたし、自分でも気づかないうちに、浅井葉月という人間に、どうしようもなく、触れたかったみたいだ。