存在を認識してから
何回か姿を見かけたけど

目が合うとあの子は
すぐに逃げてしまうから、声を聞いたのは初めて


「…」


とっさに声を返すことが出来なくて
ただ、じっと見つめる感じになってしまう


あの子はそんな私に怯えたように
びくびくしながらも
そっとドアの影から出てきて


カウンターの上に置いてあったメモ帳に
さらさらと何かを書き始めた


そして


書き終わると、それを私に差し出す


よく分からないまま、反射的に受け取る

見ると、それは手書きの地図だった



「……そっちだと
近いけど入り組んでて大変だから
少し遠くなるけど
この道から行くと分かりやすい……です」



私が広げて確認してた地図を一瞥してから
自分が書いた簡易地図を指差す