「俺が何で不快になる?」


きょとんとした声

思わず顔をあげる
榊は心底不思議そうに首を傾げていた


「だ、だって……
こんなの……気持ち悪いでしょう?
自分で…、傷付けて…
致命傷も負わせられないくせに……」



死ねるほど、深く傷付けられもせず

だけど何度も何度も繰り返した


痛みは当然感じてた

涙が出るくらい痛かった

中途半端な深さの傷でも

薄皮一枚裂いただけでも


痛みはある



泣くほど痛いならしなければいいと言われるだろう

分かっていてするなんて馬鹿だと呆れられるだろう


だけど


それでも




「必要だったんだろ。お前が生きる上で。」




怯える目をしていたであろう私に
榊は普段と変わらない飄々とした態度で言った



「生きようと必死に足掻いた証であるものを
気持ち悪いと、馬鹿だと思うはずがないだろ」