「何をやってるんだ、お前は」

「…」

「いきなり起き上がるな
危ないだろ」

「……ました?」

「?」

「…………見ましたか…?」

「何を」

「……………傷……」


腕を隠すように上着を強く抱き締め
うつ向いたまま榊に問いかける

どくんどくんと心臓の鼓動が早くなる

血の気が引いていくのが自分で分かった




誰かに見られるのが嫌だった


相手を不快にさせること

落胆させることが怖かった

気持ちが悪いと罵られるのが

かわいそうだと、哀れだと

同情の目で見られるのがたまらなく嫌だった




「ああ、見た」

「……っ、…すみません…」

「何で謝る?」

「……不快にさせて……」


榊の口から出る言葉を聞きたくなくて
距離を取ろうとするけど

体が思うように動かない