「……風邪、ですか」

「そうなんだよ
咳は収まったんだけど、熱がまだ高くてね」


心配そうに語るおばあさんに
「病院には?」と言葉を返す


「行くのを嫌がってね
市販の薬を飲んでるよ」

「…」

「初日よりは落ち着いてきたから
大丈夫だとは思うんだけどね
ただ、ひとりにさせるのは少し不安だから
できれば佐奈ちゃんにお願いしたかったんだ」



配達の準備の傍ら
お願いがあるとおばあさんは口を開いた


それは数日前から
風邪で寝込んでいるあの子の様子を
今日一日、見ていて欲しい、という内容だった


しばらくあの子の姿が見えなかった理由は
どうやら、それだったみたい


今日はお店は午前中だけの営業

おばあさんは午後から
用事があって留守にするらしい



「近くにいてくれればいいんだ
時折、様子を見てくれればそれで
……だめかい?」