ことほぎのきみへ

……亜季、料理できるのかな

包丁とかでケガしたりしないかな
やけどとかしないかな

なんて心配が湧いてきてしまう



「…」




…………でも…


……亜季が来てくれて良かった


家の中に人の気配がするだけですごく安心する

話してると気も紛れる


誰かがいるだけで全然気持ちが違う


さっきまであんなにうるさかった声が
静かになって

重かった頭や体が少し軽くなって


「…」


強張ってた体から力が抜けて

どっと疲れが押し寄せてくる



……あ、れ……



唐突にやってきた眠気に
耐えられなくて、私はそのまま眠りに落ちた



――……



「…」


ふっと目が覚める

家の中に入ってくる光の色が茜色に変わっていた


「おはよ、いろちゃん」

「…」


すぐ傍でスマホをいじっていた亜季が
目を覚ました私に気付いて笑顔を向ける


「少しは眠れた?」

「……っ、ご、ごめん…
亜季を放って寝ちゃって」


がばりと起き上がる
拍子で体にかかっていたタオルケットが落ちる

取り込んでそのまま
置きっぱなしにしていたやつだ

亜季が私にかけてくれたんだろう


「いいんだよ
私が横になっててって言ったんだもん」


ぐじゃぐじゃになってる私の髪の毛を
手ぐしで整えながら、亜季は屈託なく笑う


……いつもと立場が逆転してる


なんとなく気恥ずかしい