ことほぎのきみへ

「…」


………いろんなことが
一度に起きすぎて、頭がパンクしそう


会いたいと願っていた人が、今、目の前にいる


…どうしよう


いざ本人を目の前にしたら
言葉がうまく出てこない

まるで、さっきのゆうりみたい


………『ありがとう』って、ずっと言いたかった


感謝してる事を伝えたかった


でも


…そもそも、この人はあの日の事を
私のことを覚えていないかもしれない


たった一回
少しの時間話した相手のことなんて…


流れていく景色と一緒だ


とるに足らないことは記憶から排除される


私にとってはあの時間は
とても大切で、忘れられない記憶だけど
この人にとっては、きっとそうじゃない


3年も前の出来事だ


もう忘れてる


覚えてもない相手から
昔のことを言われても反応に困るだろうし…


「…」


ちらりと視線を向ける


……ほんとに全然変わってない


「……あの
助けてくれて、ありがとうございます」


意を決して声をかける

とりあえず
さっき助けてもらったことへの
お礼を先に切り出した


もし、この人がいなかったら
今頃どうなっていたか

想像すると、ぞっとする


「どういたしまして」