ことほぎのきみへ

ふと、目の前に影がさした


顔をあげるとそこには悟先輩

同じように顔をあげたゆうりが
びくりと硬直した


「柳、波崎(はさき)。遊ばねーの?」

「えっとー…」

「海も気持ち良かったぞ
意外と水綺麗だったし」


声を弾ませながら笑いかけてくる先輩を前に
どうしたらいいかと頭を悩ませる

ちらりとゆうりを一瞥


……ああ、うつ向いちゃってる…


「私は泳げないので」

「そうなのか。そりゃあ残念だな
ま、後で足だけでもつかっとけ
気持ち良いから」

「はい」

「波崎
今、亜季に買い出し頼まれてな
一緒について来てくれないか?」

「へ?」


ゆうりがびっくりした顔で先輩を見た



『悟君、おなかすいたから何か買ってきて』

『は?…いいけど
なに食いてーの?』

『なに売ってるかわかんないから
ゆーちゃん一緒に連れてって!
ゆーちゃんなら私の好み知ってるから
いいの選んでくれる』



「…ってな」


…なるほど

とにかく行動しろと
尻を叩いたつもりなんだろうな亜季


「…」

「連れてけって言われたけど
嫌だったら、俺ひとりで行くけど」

「い、嫌じゃないです、けど…」


ゆうりがちらりと私を見る

助けを求めている目だったけど
ここはあえて亜季側につこう


「ゆうり、私は少し散策してくるから
飲み物、よろしく」

「………はい」


笑顔を向けると
観念したように、小さな返事が返ってきた