『いろは』



……お母さん?



『良かった。起きてくれて』



…ここ、どこ?



『いろはが来るのは、まだ早い場所』


……



『ほら、もう戻りなさい』



……また、会える?




問いかけにお母さんは無言で優しく笑う




『いろは』




『大丈夫だから。不安にならないで』




『泣かなくても、大丈夫だから』





……
……
……




……目が覚めたら真っ白な部屋にいた




「お姉ちゃん!」


「いろは姉!!お父さん、いろは姉
目を覚ました!」



ぼんやりする頭と視界

だけど

今にも泣き出しそうな顔の優と
泣きながら私にしがみつく花菜の姿は
はっきりと確認できて



「いろは」


「…………おとう…さん……」


「良かった」



心の底から安堵する表情を前に
私はなにがなんだか分からないまま



「なにが……」


「雪でスリップしたトラックが
お前の方に向かって突っ込んできたんだ」


「…私……」


「軽い脳震盪だそうだ」


「……」



……頭がぼんやりして

お父さんの言葉をうまく理解できない



「……お前と一緒にいた人が
お前を庇ってくれたおかげでその程度で済んだ」



………一緒に、いた人……


………………ひさとさん……



「……そう、だ……ひさとさん……は」


「……。
今は、眠りなさい
まだ、意識が朦朧としているだろう?
起きたら……話そう」



言葉にするのを躊躇うような
最初のわずかな沈黙に胸がざわついた



だけど



頭が、体が重くて



それ以上目を開けていられなかった




「……」




……………ひさとさん




私は再び意識を手放した