「本当にただの自己満足なんだ
だから、いろはがそんな風に
気にしたり謝ったりする必要ない」



「全部、俺が自分のためにしたことだから」



……
……




……それを良くないことだって思っているのか


それきり


視線を落として黙り込むひさとさんに
私はそっと手を伸ばして


その頭を撫でた



「それでも、私が救われたことも
嬉しいって思ったことも全部事実です」


「それに、それでひさとさんの気持ちが
少しでも楽になるなら
それでひさとさんを掬えるなら」


「私は嬉しいです」



例え

今のしがらみからひさとさんを救えなくても
沈みそうになるその気持ちを掬いあげることが
出来るなら


なんだっていい
どんなことだって構わない


ひさとさんが楽になるなら

この人が生きやすい『今』になるなら




心からの言葉

笑いかければ驚いたような表情


だけど、段々緩んで優しくなる



「……ありがとう」



……ようやく笑ってくれた


ずっと見たかった笑顔


その笑顔に安心して、私はそのまま眠りについた



……
……
……




「……いろはは気付いてないんだね
まぁ…俺も気付いたの最近だけど」



微かに現実に残る意識が
ぽつりと呟かれた言葉を拾う




「俺の方が、きみに救われてたってこと」




左手にあったかい感触




「「今」の俺を救ってくれてるのは
きみだってこと」




「……ありがとう。いろは」




……そんな、優しい声が聞こえた気がした