「た、助けて貰っただけ……」


……ただ


あの時のひさとさんはいつもと少し違くて

なんていうか……

多少なりとも
私を意識してくれてたように見えた


深い意味はないって分かってても
あの言葉や行動に、独占欲に似た感情を感じて

それが私は嬉しくて


ひとりで勝手に………浮かれてた



あんな…

照れたような顔を見たのも初めてで……

可愛くて、かっこよくて


ひさとさんが帰った後も
顔の熱はなかなか引かなくて

とにかくずっとどきどきしてた



「いろちゃん。諦めるんだ。
目撃者が多数いる。言い逃れできないぞ!」


犯人を追い詰める刑事のような口調で言いながら
亜季はにやにや笑う


「……というか、見られてた事が一番恥ずかしい……」


両手で顔を覆う


締まりのない緩みきった表情をしてたであろう私
分かりやすく恋してます、みたいな空気を出してたかもしれない

そんな姿をクラスメイトに見られていた恥ずかしさに襲われる



「いろはがすごく可愛かったって
真白とかつばきとか言ってたよ」

「…やめて、恥ずかしい……」

「付き合いたてのカップルなんでしょ?っても言われてたね」

「…………やめて…」

「とにかく
いろはちゃんがひさとさんと一緒に文化祭を楽しめたならいいんじゃない?」