なんとか声を絞り出そうとした矢先に


「悪いけど……」

「……へ?」


ぐいっと肩を引き寄せられる


「この子は俺のなんだ
だから、他の子当たってくれる?」


……心なしか、不機嫌そうな声で言いながら


力強く私を引き寄せたのは



「ひ、さとさ……」



ひさとさんだった




「……あ、……そっか、彼氏いたんだ」


割って入ってきたひさとさんに
同じようにびっくりしてたその人は
ひさとさんのその言葉にしゅんと肩を落として

残念そうに呟くと


「いきなりごめんね
……彼氏さんも、かわいい彼女にちょっかいかけてごめん」


苦笑を浮かべて

私とひさとさんに頭を下げて
そのまま去っていった



……
……
……



「………………あの、ひさとさん」

「なに?」

「………………怒って、ます?」

「怒ってないよ」

「でも」


いまだに私の肩を掴む手には少し力が入ってて
さっきの人が消えていった先を見る目は
どこか苛立っているように見える



「怒ってないよ。少しいらっとしただけ」


再び否定して、そう付け足す

どうやら
苛立っているように見えたのは当たってたらしい


「……どうして?」


問いかければ
ようやく私に顔を向けたひさとさんは
沈黙の後、首を傾げた


「………?どうしてだろう?」

「私に聞かれても……」


本当に不思議そうな表情
ひさとさん自身も自分の言動に戸惑ってるみたい