ことほぎのきみへ

「………………俺、きみに何かした?」

「……何かって?」

「…………抱き締めて、寝てたから……」


いつもは冷静な声音が
今は焦燥感に満ちていた


寝惚けていた私だったけど
徐々に意識がはっきりしてきて


「……あ」

「……」

「……だ、抱き締められただけなので……
あの、他には何も……っ」

「……ほんとに?」

「はい」


慌てて答えると
ひさとさんはほっとしたように息をついて


それから


「………………ごめん」


ひどく申し訳なさそうな声で言って、頭を下げた


「……だ、大丈夫です
寝ぼけてたんですよね」

「…………でも、ごめん
嫌な思いさせた」

「……嫌な思いなんて……」



「ひさと!!」


「「!!」」



バン!!!!


大きな声


壊れそうな位の音をたてて部屋のドアが開いて


現れたのは



「……矢那さん」



慌てた様子の矢那さんだった



「……いろはちゃん」



ベッドの上、よれた制服、寝起きの姿


そんな私を見た矢那さんは
表情を強張らせて
部屋の隅にいたひさとさんの胸ぐらを掴んだ


「…ひさと、歯食い縛りなさい」

「…」

「ま、ままま待ってください!!!」


完全に勘違いをしてる矢那さん


激怒してる


無抵抗のひさとさんに
そのまま平手打ちをかまそうとする矢那さんを
私は慌てて止めたのだった