ことほぎのきみへ

……油絵だから、そう思うのかな?



いつもの繊細な、優しい絵じゃなくて

感情のまま描きなぐったような荒々しい絵



花と、人物の絵


すごく上手ではあるけど…

色使いが暗くて、人物の表情が険しくて


……少し、怖い



「……いつもの絵の方が好きだな……」



ぽつりと呟いて


手に持っていたスケッチブックを机の上に戻す


油絵の
険しい表情のその人の視線を背中に感じながら
静かに部屋を後にした



こんこん



またドアをノックして、ドアノブを回す



「…」



さっきの部屋とは打って変わって

簡素で殺風景な

本当に眠るだけの場所のようなその部屋の中に


……いた


部屋の隅のベッドで
横になってるひさとさんを見つける


どうやらここはひさとさんの自室のよう



「…ひさとさん?」

「…」



呼び掛けながら傍に近付く

どうやらひさとさんは眠っているみたいで
声をかけても微動だにしない

そっと顔を覗き込む

規則正しい寝息が聞こえてくる


………熟睡してる


……起こすのもなんかやだな
ごはんだけ作って今日は帰ろうかな



「……ん?」



…………お酒?

ベッド脇の机の上に缶チューハイの空き缶
飲みかけの日本酒が無造作に置かれてる


……ひさとさん、お酒飲んだりするんだ

あまりお酒を飲んだりするような人には
見えなかったから少し意外



♪~♪~



そんな事を思っていると


制服のポケットに入れていた自分のスマホが
着信を知らせる