ことほぎのきみへ

――……



「…」



ひさとさんの家の前まで来て、足を止める



『好きなんじゃないの?』



この前ゆうりに言われた言葉がずっと消えなくて



……なんとなくひさとさんに会いづらい



……


……好き、なのかな…


ひさとさんの事


そういう意味で



……だから、嫌じゃなかった?


触れられるのも、一緒にいるのも



傍にいると気持ちが落ち着くのも


……好きだから?



不快感も警戒心も微塵も湧かないのは


……好きだから?



……
……
……



……なら、なんで私は


ゆうりのように
好きな人を思って顔を赤らめたり

亜季のように
好きな人の事を嬉しそうに話したり

ゆまちゃんみたいに
幸せを感じる雰囲気を見せたり


そういう反応が出来なかったの?



……なんで、最初に思ったのが


『怖い』なんだろう


浮かべた表情が『困惑』だったんだろう



「……やめよ」



考えても分からない


別にひさとさんにあの会話を聞かれたわけでも

その可能性を知られたわけでもないんだから


自分自身でさえはっきりしてない気持ちだ


何もなかったことにすればいい

ゆうりに言われた言葉は奥にしまって

今まで通りに私はひさとさんに接すればいい



「……うん」



もやもやは残ったまま


だけど


自分に言い聞かせるように頷いて
また歩き出した