ことほぎのきみへ

年齢は聞いてたけど
何をしてるのかは聞いてなかった


「うん」

「……嫌なお話だったんですか?」

「まぁ……良くはないかな」

「…」


めんどくさそうに頭を掻きながら
ひさとさんはまた、ため息をつく



……



物言いたげな表情をしていたであろう
私を見おろして
少しの沈黙の後、ぽつりと溢す



「……絵を、売ってくれないかって話」

「絵?」

「絵描きとして
やっていかないかって言われてる」

「…ひさとさん
大学って芸術とか美術関係の?」

「うん。美大」

「いつものことって…」



かなり熱心に
お願いや勧誘をされてる様子だったけど…

昨日、今日に始まった事ではないみたい



「元々、俺の母親が絵描きでさ
その界隈では有名な人だったから
亡くなってから、まあ……色々あって」



……【色々】



『……あの子も色々大変って事』



あの時の矢那さんの言葉を思い出す


「その「色々」が落ち着く間もなく
公募展や、コンクールに勝手に作品を出されて
それが審査員とか関係者の目に留まったみたいで
それからずっとあんな感じ」


ひさとさん自身は
かなりそれに迷惑している様子で
うんざりしたように話す



「……ひさとさんは
そういう道に進むのが嫌なんですか?」



許可もなく勝手に自分の作品を持ち出されれば
苛立ちや不快感、嫌悪感が沸くのは当然だ
それに関しては私も相手の神経を疑う


だけど、その作品が誰かの目に留まって
そう評価されたのは
素直にすごいことなんじゃないのかな


絵描き……ようは画家として


絵を生業としていけるだけの腕を
見込まれたって事なんだろうし