【短編】キミに伝えたい好きがある

「そんなの無理だよ、無茶苦茶言うよな、富田は」


何がおかしいのか、ちょっと笑って私を見る彼を睨んでしまう。


優しくて穏やかな声も、大好きだけどこの時は、あまりの鈍感さにムッとした。


怒ってるんだからね、私はさっきから。


「遼ちゃんのバカ」


聞きとれないくらいの小声で呟いて、腕を離すと彼をおいて早足で歩きだした。


後ろを振り返らないで、ズンズン歩いたけど、追いかけてくる気配が全然ない。


わかってたけど、彼がこんな時でも私の機嫌をとるようなことするわけないってことくらい。