しばらくして、アキくんの優しい声がした。


「奈帆せんぱーい」


顔を上げたら、グラウンドにいるアキくんが笑顔で、手を振ってくれている。


私も、ちょっと笑って手を振りかえした。


彼は両手を合わせるようにして、ペコッと頭を下げてくれて、それから口を開く。


おそらく、「ごめん」って言ってくれているような気がする。


それを見たら、少しだけ心が軽くなったような気がした。


私って甘いのかな。


騙されてたんだと、わかってもアキくんのことをどうしても憎めないんだ。


だけど、


どうしょう、遼ちゃんを傷つけてしまった。


きっと今頃凄く怒っているだろうな。


グラウンドでサッカーの練習に戻った遼ちゃんに目を向けても、それから一度もこちらを見てはくれなかった。


練習が、終わるまでじっと見つめていたけれど、諦めて先に1人で帰ることにした。


きっと、今日は私の顔なんて見たくもないんだろうな。


彼に避けられている気がしたら、急に怖くなってその場から逃げ出してしまった。