「じゃあわかった、食事の買い出しは美夜のお財布にお任せしようかな。それが俺の最大限の妥協案。」

え、それだけでいいのかな?

だって電気とかガスとか…家賃とか…

椎名さんは私の考えを見通したのか

「それ以上は譲らないよ。俺だって美夜より年上の男なんだからカッコつけさせて欲しいし。」

って少し胸を張って大げさにいうから、

可笑しくて笑ってしまう。

「ふふっ、わかりました!じゃあたくさんお買い物して、美味しいご飯を作れるように今まで以上に精進します!」

「ん。よろしい!バイト夜遅くなるとかなら言って、迎え行くし。」

頭を撫でられて、

服を摘んでいた手を優しく包まれる。

「無理はしないこと。」

「は、はい。」

返事をして、ぎゅっと手を握り返すと満足げに椎名さんが微笑む。

胸がキュッとした気がする…

ふと、椎名さんの横に視線を向けると愛菜さんがすごく私を睨んでいた。

ビクッとするけど、

今のこの胸のキュッとした気持ちが愛菜さんの邪魔になるんだろうと漠然と思って、

なんとも言えない気持ちになった。

この気持ちが椎名さんに対する、

恋なのか、

憧れなのか、

はたまた、忠誠心なのか、

わからないけど、椎名さんを愛菜さんに独占されたくないって思いは私の中に確かに芽生えた。

私は勇気を出して、

「し、椎名さんっ、ありがとうございますっ」

「え。」

椎名さんに飛びついて、ぎゅっとした。

すぐに飛びのいて、走って結菜たちの席に向かって結菜に抱きつく。

彼女にだって、愛菜さんにだって、

椎名さんは独占させたくない!

私の小さな抵抗。小さな宣戦布告。