「言うタイミングを逃して…ごめんなさい。」
私が謝ると椎名さんは少し不服そうに、
「そんな言いにくかった?」
と答える。
「最近忙しそうでしたし…そんな時間を割いてもらうほどではないかなと…」
「美夜のことなら全然時間あけるよ?お金…困ってるの?」
私は首を振る。
「じゃあなんで?」
「えっと、生活費…今は椎名さんにお世話になりっぱなしなので少しは…とか考えたり…」
「それは俺がしたくてしてるんだから気にしないでって言ったのに…」
はぁ。とため息をつかれる。
ビクッとしてしまう。
また…繰り返してしまう…?
あんな思いは…もうしたくない…
あの家ではため息は…全ての始まりだった。
カタカタと震える身体を自分で抱きしめる。
湊たちが気づく気配がする。
だめ、心配かけちゃう、どうしよう、
震えるな、
そう思ってると椎名さんから手が伸びてくる。
それがあの家でのことと重なって、
私は伸びてきた手を、
「やっ!」
払ってしまう。
椎名さんの驚いた顔と周りの空気に、
固まる。

