私は聞こえなかったフリをして、
メニューとお冷やを出す。
店内を見渡すと、
結菜たち以外ではそのひと組しかいなかったお客さんがお会計をして出て行くのが見えた。
どうして今日に限ってこの時間空いてるの…
「ご注文は…「美夜。」」
ぅ…
椎名さんが私のことを真っ直ぐに見る。
「いいじゃない、晴翔くん。バイトくらいでそんな責めなくても。」
え、愛菜さんの思わぬ援助に少し驚く。
「お化粧にも洋服にも、彼氏にもお金たくさん使っちゃうものね。」
援助…ではなかった。
クスッと笑う目はあの日と同じだ。
邪魔しないでって言われているのだろう。
私だって邪魔したくてしてるわけじゃない、
なんて可愛くないか。
黙ってた私が悪いのだから。
店長に私と椎名さんのことを当たり障りなくざっくりと説明する結菜たちの声を背中に私はどうしたものかと頭を働かせる。
「愛菜…茶々を入れないで。美夜に聞いてんだから…」
愛菜…っていう呼び方にモヤとしつつも、
今日2人はなんでここにいるんだろうと考え始める。
今日は土曜日で椎名さんはお仕事お休みのはずだし…
デート…?

