飼い主の溺愛


入り口の方を見ると、

椎名さんと、

愛菜さん。

椎名さんは目を見開いていて、

私は私でフリーズする。

人間驚くと何もできないんだなぁ、

なんて頭では冷静な私がつぶやいている。

「いらっしゃいませ。」

クロくんの声に現実に戻る。

「い、いらっしゃいませ。」

後ろの方の湊たちの席から、

「あちゃ〜」「こんなことあるんだ〜」なんて声がする。

「…」

椎名さんは私をみて固まったまま。

愛菜さんが、

「2人で。美夜ちゃん久しぶり、覚えてる?」

なんて言う。

たまたまなのか、耳にはこの前私が拾ったピアスがついている。

「お…お久しぶりです。お席ご案内します…」

私は椎名さんの顔を見ないようにして2人を案内する。

「美夜。聞いてないよ。どう言うこと。」

ぴゃっ

少し怒ったような悲しそうな…

聞いたことない椎名さんの声に肩を震わせる。