椎名さんは自分の部屋に入られることに抵抗がないらしく、
部屋や寝室の掃除機も私がついでにかけちゃうことが多い。
いつもと同じようにかけてると、
ピアスを拾った。
ベッドの横あたり。
…これって、
「愛菜さんの…」
きらきら光る大ぶりのピアスは昨日みた愛菜さんがしていた。
よく似合ってるなぁ綺麗…と思ったから覚えていた。
ここは椎名さんの寝室で。
ここはベッドのそばで。
ピアスが外れることに気づかなかった状況であっただろうわけで。
昨日結菜たちに言われたことを思い出す。
『いい?大人の男性なんだから!ぼさっとしてると取られるよ!』
取られるって言われても…
って気持ちで本気で話を聞いていなかったけど…
そっか。
そうだよね。
大人だもんね。
そっかぁ…
なんだか複雑な気持ちに気づかないふりして、
ピアスを渡して掃除を続ける。
そっかぁ….そうだよね…
そんな曖昧な言葉だけがぐるぐると頭を駆け巡っていた。