飼い主の溺愛


「え、あの!椎名さん!?」

「はい、暴れない暴れない。」

車を締めて、エレベーターに乗り込む。

美夜は始め抵抗していたけど、

途中から諦めたのか、大人しくしている。

「椎名さん、お、重くないですか。」

小声で早口で聞いてくる。

廊下を歩きながら、

「重くないよ。」

と笑うと、

「あー、笑ったー、重いんじゃないですか〜…」

と頬を膨らませて言う。

これがぶりっ子とかじゃなくて素で、

なおかつ可愛いっていうのも、

才能だな。

とか思ってると、

「椎名さん、今日はありがとうございました。嬉しかったです。」

と、恥ずかしいのか俺の服を掴みながらボソボソいう。

「ははっ、どういたしまして。俺も、ありがとう。」

今日はごめんなさい、じゃなくて、

今日はありがとう、は嬉しい。

美夜にとって少し俺の存在がより身近に感じられたら嬉しいなぁ…