見覚えがあるそれは、すごく懐かしい。

『晴翔…?』

「まだ使ってたんですね、」

それだけ返すと、

少しの間が空いて、

安堵のため息が聞こえる。

『よかった、あったのね。』

その声に少し疑問を感じる。

由梨さん、今日も彼氏が迎えにきたんだよな?

彼氏はこんなものを持っている彼女に、

何も言わないのだろうか。

「彼氏に新しいの買ってもらった方がいいんじゃないですか?捨てときますよ。」

『っだめ!…可愛いから気に入ってるの。』

…。

「っ!」

急に自分の背中に何かがぶつかる。

いや、美夜なんだけど。

美夜が心配そうに見つめてくる。

「あー…じゃあ来週の打ち合わせで渡します。では、失礼します。」

『えっ、晴翔…!』

電話を切って、美夜の方を向く。

「忘れ物だって。」