椎名さんの顔を見れずに、

うつむく。

「いや、美夜さすがに…」

椎名さんの少し戸惑ったような声。

やっぱり…

「ダメ…ですか?」

椎名さんを引き止めるために服を握った手に力が入る。

「…」

しばらく沈黙が続いて、

椎名さんが軽く息を吐く。

その動作に私は慌てて、

手を離して、笑顔をつくる。

「っなんて、すみません、気を使っていただいたのに!何かあったら連絡します!」

顔を上げると、

椎名さんは驚いた顔をしてて、

私は喋り続けてしまう。

「明日、またみんなで勉強してるんですけど、いつでも帰ってきてくださいね、本当に気を使わなくて大丈夫ですからね、だって、椎名さんのお家にお邪魔してるのは、「美夜。」」

名前を呼ばれて一瞬固まる。

目があって、

いたたまれなくなってその目をそらす。

「行ってらっしゃい…です。」

自分の服をギュッと握って、

小さく声を出す。

わがまま言ったから困らせてしまったんだ。

もう言わないから、

だから、椎名さん、怒らないで、

私を嫌いにならないで、

ここに…居させてください…

頭の片隅で、あの家のことがよぎる。

いい子でいなきゃ。

今まで椎名さんが優しいからって、

私、調子乗って甘えちゃったんだ。

困らせないようにしないと…