「こら。近すぎ。」

近づくクロくんに少し怯えて目をつぶっていると、

椎名さんの声が近くでして、

目を開ける。

頭上には椎名さんがいて、私の腰あたりに腕を回して自分の方に引き寄せてくれたみたい。

私はすぐに舞い上がる。

さっき近づけなかったから…

「椎名さんには関係ないっす。」

「言ってくれるなぁ〜美夜が少し怯えてたのわかってるでしょ?」

と私を挟んで会話が繰り広げられる。

周りはコソコソと話をしながら、楽しそうにこの状況をみているようだ。

でも私はそれよりも椎名さんの体温が嬉しくて、

顔がにやけちゃう。

「だいたい、俺の家だからね、手だすの禁止。」

「椎名さんのが出してるじゃないですか。距離だって近いし。」

「そっれは…家主の特権。」

「ズルくないですか。大人気ないっす。」

頭上の会話なんてまるでわたしには頭に入らない。

椎名さんだ…