「そしたらね、その子が―――」



俺の隣で楽しそうに、学校での出来事を話す。

自分で行動を起こしたくせに何だが、まるでこの状況が嘘のようだ。

何せ一週間前の今頃は、専ら喧嘩しているところだろう。

なのに、女と二人で平和に道を歩いてる。



「…なァ」


「? なあに?」


「お前は…

俺が恐くねェのか?」




ずっと気になってたこと、だった。

最初に話しかけられたときから。

転校生とはいえ、一度くらいは俺の噂を聞いてる筈だし、見た目だって明らかに不良だ。

良い子チャンっぽいこいつが、何で俺にこんなに気軽に話しかける?



「全然恐くなんかないよっ?

どうして?」



"どうして"?

逆に聞き返されちまった。


どうしてと聞かれると――



「…俺の噂とか、聞いてねェのか?」


「ん――、…聞いたことはあるかな」



その言葉にどきり、とした。

やっぱり聞いてるモンは聞いてるんだな。

…なのに、どうしてこいつは?



「噂は恐かったけど、高田くんって噂で聞いた人と全然違うんだもん!

とーっても優しいじゃない?」


「…は」




"優しい"…?

そんなこと、初めて言われた。

本当にこいつ、頭おかしいんじゃねぇのか?