油断……?


その青白い顔に、胸の奥がざわついた。


もしかして、大賀君。
病気、とか……。


いやな妄想がポンポンと浮かんでしまう。


私の表情を見た大賀君は、何か察したのか、プッと笑った。


「ごめんごめん。俺ね、血がだめなんだよ。こういうの何回もやらかしてる。そのくらいの怪我ならいけるとおもったんだけど……逆に迷惑かけてごめんね」


……血が、だめ?


そういえば、前に楽器屋さんでピックを選んでいた時に、そんなことを言っていたけど。


「え……?血を見て、倒れちゃったってこと?」


目を見開く。


大賀君はそんな私を見て、苦笑しながら頷くと、顔を隠すように腕を目の上に置いた。


「そう。はずかし……あんま見ないで」


大賀君の様子にへなへなと力が抜けてしまう。


「……病気で倒れたんじゃ……ない?絶対?」

「ないない。健康そのもの」

「よかったぁ……っ、ほんとによかった……」

「泣きすぎだろ」


ソファに寝転んだまま、片手を私の方へ伸ばす大賀君。


その手が私を引き寄せる。


「……っ」


ふわっと私を抱きすくめる優しい腕。


かたい胸の奥から聞こえる、激しい心臓の音。


……尊い、鼓動。

絶対……ずっと生きていて。


そう願うみたいに、大賀君を抱きしめた。