「大賀君!」


急いでハンカチで手を拭いて傷口をくるむ。

大賀君の体に血がつかないように、ぐっと持ち上げた。


床に落ちた水滴を踏んで、ズズッと靴が滑る。


すぐ傍のソファに寝かせられたけど、どうしたらいいの?


あれ、倒れた人って、動かしたらいけないんだっけ?


どうしよう。


「……大賀君……、起きて」


……動かない。


血の気が引いていく。


頭をよぎるのは、眠って動かない……蓮の姿。


起きなかったら……、どうしよう……、どうしよう……!?


「大賀君……大賀君……っ!」



半狂乱になって名前を叫ぶ私に、大賀君の目が薄く開いた。


「あ……ごめん。何分飛んでた?」


「わ、わかん、ない……」


……起きた……。


涙が張った目から、ぽろっと零れおちた。


信じられないくらい、両手が震えている。


「具合は?打ったところあるかもしれない……っ」


「大丈夫。ほんとごめん」


その時、ガラッと保健室のドアが開いた。


「あら?二人ともどうしたの?」


保健室の先生が眼鏡越しに私たちを見る。


「あの、大賀君が、ここで倒れて……!」


床を何度も指さして、叫ぶように説明した。ほとんどパニックだ。