「意外と大賀君って、選択美術なんだよね」

「うん、意外だよね。音楽取りそうなのに」

「わっかる!あたしも大賀狙いだったのに!」


ひょこっと栞ちゃんのところに顔を出したのは、クラスメイトの西田さんだ。

いつでもばっちりメイクをしていて、これでもし髪が黒くなかったら360°どこから見てもギャル。

肩下まで伸ばしたストレートヘア。指で毛先をクルクルと弄んでいる。



「おいおい。彼氏持ちが何言ってんの」

栞ちゃんが西田さんをツッコんだ。


「ええー」っといたずらっぽく西田さんが笑う。


私は西田さんと話したことがないけど、栞ちゃんは仲が良いみたい。


「てかさ、楠本さんって」


西田さんは大きな目を開いて、トーンの高い声で私を指さした。



びくっとしたことを気づかれないように、「なに?」と、緊張気味に笑みを浮かべる。


「大賀のことすきだったの?」


「……あ、うん」


「そりゃそうかぁ。だったらなんで今までクラスの女子で騒いでる輪に入んなかったかなぁ~」


「うちら完全に油断してたから!」っと文句っぽく笑う西田さんに、敵意は見当たらない。


……もしかして西田さんって、見た目よりずっと喋りやすい人なのかも。


「ねぇ。せっかく名前可愛いし、葉由って呼んでい?」


人懐こい笑顔で西田さんは、ちょっと眩しいくらいきらきらした目で私に訊く。


ひるんだ。けどその分、強く頷いた。