「葉由……?」


「私が大賀君を好きになったのは……たすけてくれたからだよ」


涙を堪えて、震える声を吐き出した。


「私ね、中一の時に……交通事故で大事な人を亡くしたの」


「……えっと……。もしかしてさっきの、“蓮”ってひと?」


「そう、蓮……。その事故が起きてから……中学三年間、」


じくじくとするあの頃の記憶が、言葉を詰まらせる。

蓮がいなくなった世界での、私は……。


「……三年間、不登校だったの。中3の夏にふらっと入ったCandy Rainで出会ったカムの演奏が……。必死に歌う大賀君が……もう一度私を引っ張りあげてくれた。大賀君の姿と歌声と、全部が……私の支えだった」


大賀君のおかげで、苦しい世界が少しずつ現実世界に近づいて。


世界は色を取り戻し、体に空気が巡って。


空が……あんなにきれいに見えた。


だからこの言い方は、全然大袈裟なものじゃない。


「大賀君がいたから……生きられた」


涙まじりの語尾は小さく震えてしまった。